モジュール化でベストセラーマシンをワンランクアップ
Cincomの主力機種として、長年世界中のお客さまから高い支持を得てきたL20。
モノづくりの潮流が変化し、お客さまのニーズが一層多様化するなか、開発陣はベストセラーマシンのさらなる市場拡大に向け、開発プロジェクトをスタートさせました。
従来機にはないワンランク上の新機能を持たせながら、生産性向上と生産コスト抑制という難題に挑み、見事成功へと導いたのです。
3人のコアメンバーに、開発への熱い想いを聞きながら、L20シリーズ誕生までのプロジェクトストーリーを追いました。
L20モデルチェンジの背景には、新機能を搭載し、多様化するお客さまのニーズに応えることで、さらなる市場拡大を図る狙いがありました。
その目標達成に向け、メカの設計責任者を務めた和田は、最上位機種であるMシリーズで競合他社に先駆けて搭載したB軸機能を、ボリュームゾーンであるø20mm機のL20に搭載するという選択をしました。
「これにより、競合他社が先行していた6軸+B軸機市場へ参入し、同時にコストパフォーマンスに優れた5軸+B軸機をラインナップに加えることで、最新のトレンドに沿った最強のモデルチェンジが果たせます」。こうして2013年2月、プロジェクトがスタートしたのです。
当時、同じ機械でガイドブッシュとガイドブッシュレスを切換えられる機能がトレンドになりつつあり、和田たち開発陣も採用を決定しました。問題は、従来機の基本機能を向上させ、B軸機能+ガイドブッシュ/ガイドブッシュレス切替え機能という新機能を搭載したうえで、生産性の向上と生産コストの抑制を実現させることでした。
このため、「ø20mm機のもう一つの代表機種A20シリーズのモジュール化に取り組んだのです」と、和田は振り返ります。
機械の電気設計を担当した内藤は、L20と兄弟機のAシリーズの設計を同時期に進行しながら、2機種間の共通化に挑みました。「LシリーズとAシリーズはコンセプトや最終的な形状は違いますが、作りやすいようベースの部分を共通にしたり、考え方の共通化を図りました。本来異なる電気設計の共通化に取り組むに当たっては、図面のなかで共通化するだけではなく、製造法や生産ラインなど図面外のものにも目を向けて踏み込んでいったのです」。こうした新たな試みは、非常に面白くやりがいがあったと内藤は熱く語ります。
制御ソフトの設計に取り組んだ小林は、4タイプの制御を1つのソフトウェアに共通化することが難題だったと振り返ります。というのも、タイプにより取り扱う軸の構成が異なるため、軸構成に合うよう制御動作を切換える設計が必要だったからです。「しかも、いよいよ量産が始まるという段階になって、大幅な仕様変更が必要となり、チーム全体で対応しなければなりませんでした。しかし、持ち前のチームワークで無事間に合わせることができたのです」。そう言って小林は笑顔を見せます。
製品開発には、品質保証や管理、製造など多くの部署が関わっており、時には意見の食い違いで衝突することも度々あったといいます。「しかし、根本的なところでは、良い製品を世に送り出したいという想いを共有していましたので、皆の情熱が込められたマシンに作り上げることができました」と内藤は話します。
先輩やチームメンバーに支えられたと話す小林は、「自分自身も、難題に直面する度に一歩先を見据えて考えるようになり、成長できたと思います」と笑顔がこぼれます。
「最初の立ち上げで配線を大きく変更したことは、プロジェクトにとって大きな出来事でした」という和田。「全体を見ながら開発を進め、今まで見えなかった部分が理解でき考え方の幅が広がりました。でも、全体を把握し客観的に判断する能力はまだまだです」と、リーダーの表情を見せます。
多様なニーズに対応できるモジュラーデザインを採用した新しいL20は、L20E(5軸機)、L20X(6軸機)という代表機種に、最上位機種Mシリーズのみに搭載されていたB軸機能を新たに搭載。L20-2M8、2M9、2M10、2M12の4タイプをラインナップしています。
さらにL12で採用され好評を博したGB/GBL切替え機能を搭載することで、2台分の機能を1台に集約。ツーリングバリエーションの充実も相まって、今までのL20ではできなかった複雑ワークの加工を実現する、ワンランク上のマシンに生まれ変わりました。
※掲載情報は取材当時